舞踊と音響の詩 「桜の花の満開の下で」 (1981)

基本
作品名(英) In the cherry-blossom forest
作品名(独) Unter den Kirschblüten
作品記号  
作品年 1981
ジャンル 舞台
演奏時間 35分
楽器 Vo (kabuki gidayu), Yokobue, Mba, Perc, Elec-Sounds
楽譜・譜面

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曲目解説

『かねてから、浄瑠璃と歌舞伎が今までとは違う形で寄り合って、何かうみだすことは出来ないものかと考えていた雀右衛門は、昨年文楽の大夫の語りと石井眞木の音楽が一体となった「熊野補陀落」を聴いて、これなるかなと膝を打ち、ここへ女形の芸を織りこもうと、坂口安吾が戦後の混乱期に書いた短編小説をとりあげた。…と雀右衛門は云っている。』

この作品では、伴奏の太棹無しで「義太夫の声」は語られ、歌われる。この太棹が無いことが重要で、これによって、義太夫は伝統的な、語り、歌うことからと、時として逸脱し、他の器楽の現代的な音楽表現と様式的に接近する。

この作品では、三つの伝統的な横笛、高麗笛、龍笛、能管が使われているが、 これは横笛の伝統的な奏法から義太夫の声以上に逸脱した現代的な奏法によっている。そして、この三つの横笛の響きの特徴を生かして、原作の内容に即した主役の「女」を表現する。例えば、気品のある響きのする雅楽の横笛である高麗笛は、女が人妻である場面で演奏され、非常にメリハリの効いた能管は、女が生首と遊ぶ残忍な場面を表現する。最も表現力の高い龍笛は、男が山に帰ると言い、女がどうしようかと悩む女の気持ち―心理的葛藤などを表現する。

これらに対して、マリンバと打楽器は、作品のさまざまな劇的な内容を随時表現しますが、特に、銅鑼(Tam-Tam)の響きは重要で、グスタフ・マーラーが 「大地の歌」で告別や死を銅鑼(Tam-Tam)の響きで象徴的に表現したように、この作品では、「桜の満開の花」がもつ恐ろしさや、男の孤独感などの心理状態を、さまざまな銅鑼の深い響きで(時に、これは電子音響的に変調されている)表現する。

なお舞踊と音響の詩「桜の花の満開の下で」は、舞台初演から17年後の1998年、NHK放送局でデジタル技法を駆使した映像作品でリメイクされNHK・TVで放映されたが、アメリカのエミー賞ni参加、「優秀賞」を受賞している。そして、2000年にはこのTV映像作品は西ドイツ放送局によるドイツ語ヴァージョンが制作され、全ドイツで放映された。

初上演:20.6.1981/「雀右衛門の会」/草月ホール/女(舞踊と女声):中村雀右衛門/語り(義太夫/男声):豊竹呂大夫/横笛:赤尾三千子/マリンバ:荒瀬順子/打楽器:山口恭範/作詞:美弥照彦/装置:朝倉摂/美術:金子国義/照明:北寄崎嵩/演出:宮川高範

石井眞木、1981年06月。源:初演時のプログラムより