アフォリスメンI (1963)

基本
作品名(英) Aphorismen
作品名(独) Aphorismen
作品記号 005
作品年 1963
ジャンル 室内楽
演奏時間 9分
楽器 vn, va, vc, perc, pf
楽譜・譜面
株式会社音楽之友社
連絡先 〒162-8716 東京都新宿区神楽坂6-30
電話 (出版部)03-3235-2145
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曲目解説

楢崎洋子, 2002年。源:CD「日本の作曲・21世紀へのあゆみ」実行委員会 ECJC-019

ベルリン留学から帰国した直後の作品。1963年7月7日、NHK第2放送の「現代の音楽」で放送初演されたのち、同年9月5日、京都で関かれた「第5回現代音楽祭」で舞台初演された。その時のプログラムに石井はこう書いている「1つの12音音列とリズム帯とが相関的に全体の統ーを計っている。ここでの不確定性などは、より規制されたものである」。

不確定性は規制されていると石井は書いているが、弦楽器に「通常のピツィカート」「2本の指でつまみはじく」「爪(左手)でおさえる」、ピアノに「ピアノ線を左手の指で“強く” “中庸に” “弱く”おさえて変音させる」「ピアノ線を指でつまみはじく」「ピアノ線を指でなでる」等々奏法を具体的に指示する中に、不確定にしておいたのでは必ずしもリアリゼーションされるとは限らない多様な音色が示唆されている。第1曲は「できるだけ速く」。短音で飛び散る各パートの中で、各種ピツィカート、コル・レーニョ、楽器のボディをたたく等の奏法が交代するので、飛び散る印象はいっそう強まる。複雑に入り組んでいるとも混沌としているとも言いがたいアンサンブルが行われる。第2曲は第1曲とは対照的に、空間の中に音が現れては消えるプロセスがパート間に重なる。第4曲では小節線が取り払われて、音を発しては他のパートが音発する。第7曲では、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、打楽器、ピアノの各パートが別々に書かれていてパート間のたての関係は自由にされているが、各パ一トは同時に演奏を開始し同時に終了する、と指示されている。

タイトルのアフォリスメンは箴言の意。バガテルふうの7つの小品に、音と音の自由で厳密な関係が凝縮されている。

石井眞木, 1963年。源:「第5回現代音楽祭」(1963年9月)プログラム より

今年の5月に脱稿したこの作品は 7月7日 NHK〈現代の音楽〉の時間にNHK室内合奏団 指揮若杉弘の諸氏により初演放送された。

7つの短かい部分からなるこのアフォリスメンには 不確定性 任意性 その他技術的な諸問題が追求されているが 1つの12音音列とリズム帯とが相関的に全体の統ーを計っている。ここでの不確定性などは より規制されたものでありまた一方12音音列 リズム帯の処理はいわゆる伝統的(Schönberg Webern 的)ではないが かなり数理的な方法で行われている。しかしここでの問題点(同時にねらいでもあるわけだが⋯ ⋯)はこの不確定性などの導入によって必然的に生じる論理的不都合ということで この不都合⋯ ⋯いいかえれば数理的統一の弛緩を前提としての〈音楽〉の把握なのである.

Aphorismen(簸言)とは この作品の完成ののちに名付けられたもので ここでは純粋に私自身のための⋯ ⋯私の今後の創作に何らかの指針を⋯ ⋯という意でなされた。