遭遇 I 番 (1970)
作品名(英) | Sō-Gū I |
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作品名(独) | Sō-Gū I |
作品記号 | 018 |
作品年 | 1970 |
ジャンル | 室内楽 |
演奏時間 | ca. 12分 (未決定) |
楽器 | shakuhachi, pf |
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曲目解説
ー尺八奏者とピアニストは、それぞれの独奏曲を同時空間で奏し、遭遇させる。ー
タイトルの「遭遇」とは、<予期せぬ出会い>の意味である。この作品を作曲した当時、1970年では、尺八とピアノ―東洋と西洋の全く異なる音楽観を有する二つの楽器が、同じ時空間で<出会う>ということは西洋音楽の使徒であった作曲者にはまったく<予期出来ぬ>だったのである。
尺八は東洋―日本の伝統音楽の代表的な楽器であり、ピアノは西洋音楽の<楽器の王様>といわれる。そしてこの異質な世界観をもつ二つの音楽が、音楽史上初めて同時空で出会うことによって何が生まれるのか。そして、東洋と西洋、伝統と現代、といった二元なるものの内から、何か新しい意味をもった一元的音世界が得られるのか、がこの作品の創作動機であった。
尺八は、人間の呼吸が直接、音になる<肉体性>をもった楽器だ。これに対してピアノは、高度に複雑なメカニズムを有する楽器で、人間がこれを制御しながら音をつくる。この意味で両者は対極にある。この遭遇とはつまり、肉体性と非肉体性(人と機械)、換言すれば、具体的感覚性と抽象的構造の出会いでもあり、作曲者はここから、これまでにない音世界が希求できると考え生まれた作品である。
石井眞木
タイトルの「遭遇」とは、<予期せぬ出会い>の意味である。1970年当時、尺八とピアノ、この東洋と西洋の全く異なる音楽観を表出する二つの楽器が、同じ時空間で<出会う>ということは、予期せぬ出来事だったのである。
言うまでもなく、尺八は東洋━日本の伝統音楽の代表的な楽器であり、ピアノは西洋音楽の<楽器の王様>と言う。そしてこの異質な音楽が、音楽史上初めて同時空で出会うことによって、何か新しい意味をもった音世界が得られるのだろうか、というのがこの作品の創作動機であった。
尺八は、人間の呼吸が直接的に音になる、いや、呼吸そのものが<音楽>といえるもので、<肉体性>をもった楽器といえる。これに対してピアノは、高度に複雑なメカニズムを有する楽器で、人間の知能がこれを制御しながら音をつくる。この意味で両者は対極にある楽器、といえよう。
この作品の創造にあたっては、2つの異質な楽器が出会うための方法論を見いだすことが不可欠であったが、これは至難であった。先ず、それぞれの独奏曲を書くことにした。そして当時の前衛技法によるピアノ曲には日本的音要素を混在させ、逆に、尺八曲には前衛技法を慎重に導入するようにした。それぞれの曲には、作曲者によって濾過(ろか)された前衛技法と日本的音要素を混在させた。それによってある様式的な<近似性>の獲得を求めようとした。そしてこの二つの独奏曲をある一定の規定のもとに同時に演奏、<遭遇>させたのである。
石井眞木