モノクローム (1976)

基本
作品名(英) Monochrome
作品名(独) Monochrome
作品記号 028
作品年 1976
ジャンル 室内楽
演奏時間 22分
楽器 j-drums, gongs
楽譜・譜面
リコーディ音楽出版社本社
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曲目解説

日本太鼓(和太鼓)も打楽器の一種であるが、西洋音楽で使われて来た打楽器とは全く異なる打楽器である。確かに、通常の打楽器の小太鼓(Tamburo Militare)、トムトム(Tom-Tom)、大太鼓(Gran Cassa)などの膜質打楽器という分類では同じであるが、日本で独特な歴史をもつ和太鼓は、似て非なる楽器である。演奏法も異なる。

私は、和太鼓のグループ「鬼太鼓座(おんでこざ)」のために作品を書いた。このグループは20年程前に結成されたが、20人前後の若者を、かつては流人の島であった歴史をもつ佐渡ヶ島に集めて、毎日20キロメートルのマラソンで鍛え、太鼓を徹底的に打ち込み、その特訓の連続は特異な太鼓集団を作った。太鼓の基礎は、日本の神社のお祭りなどの民間に伝承されてきた民族芸能の太鼓奏法だったのだが、彼らはそれを変形し、独特な太鼓の世界を創っていった。

石井眞木は1975年にこのグループと出会って、「モノクローム」,そしてつづいて「モノプリズム」(1976/Op.29)を創った。ここで石井は、彼らにとって全く新しい打法を考案し、その新打法が、彼らの<血となり肉となる>までの訓練を要求し実践した。当初の訓練は、いわゆるスパルタ的な厳しいものだった。「モノクローム」の冒頭の部分の、ただ単純な最弱音(PPPP)の連打音を延々と2時間でも3時間でもわき目も振らず<叩きつづける>、という訓練を何日も何日も行った。あとは推して知るべしであるが、これは、スパルタ的訓練というより、まるで仏教の求道者の<行>に近いものであった。この成果は、いわゆる超絶技巧というような概念を超えた、信じられないような、演奏の異常な<正確さと力動感>を獲得することになる。マラソンと太鼓で鍛えた肉体の勝利であろうか。

「鼓童」は1981年に鬼太鼓座から独立した和太鼓のグループである。その時、この新生の和太鼓グループのために「入破」(1981/Op.46)を書いて贈ったが、このグループには、当初の鬼太鼓座の正確さと力動感の<伝統>が、脈々と生きつづいてきている。和太鼓は音の響きの性質上、ライブ公演に最大の効果をあげる。電気的媒体では魅力が伝わりにくい。CDの出現は朗報だが、TVなどのメディアでは効果は半減するという宿命がある。したがって彼らは世界中を公演して巡わる。「モノクローム」、「入破」は、初演以来世界各地で恐らく、前者は5000回以上、後者でも1000回以上の演奏を行っていよう。 現代の新しい作品の演奏回数としては、驚くべき数字である。日本太鼓のための作品群は、石井眞木の全作品の中でも、特別な位置を占めるもので、この特異な作品は、最初は「鬼太鼓座」、「鼓童」の専売特許的作品と考えられていたが、作曲者はすでに1984年にオランダでオランダ人の日本太鼓のグループ「サークル・アンサンブル」の演奏を聴き、見事な「モノクローム」の演奏に驚嘆させらている。

初演:3.10.1976/メタムジーク・フェスティヴァル・ベルリン/ベルリン・近代美術館特設ホール/日本太鼓:鬼太鼓座

オランダ初演:1984/ハーグ/日本太鼓:サークル・アンサンブル

オーストラリア初演:9月1992/シドニー・オペラハウス/日本太鼓:SYNERGY

石井眞木

 

佐渡国・鬼太鼓座は猛烈に太鼓を打ち込む。そして、そこから滲みでるものは、”直観”とも、"瞑想"とも異質の求心的な即興性である。これはまた、単色の華麗きともゆうべきものをかもし出すようにみえる。「モノクロームI」はこのような特質をふまえた上でさらに、確定(単純)から不確定(複雑)へ、またその逆方向へめ律動の移行が連続的な構造変化をともなって展開する、といった新らたなー鬼太鼓座にとってー要素も含まれている。構成は非常に簡素化されており、解かリ易く図式的に示せば、[A→B→C→B1→A1+2→B2→C2→B3→A3+4→]となり、”螺旋” 状に進行してゆく。

石井眞木, 1976年02年。源:「第1パンミュウジクフェスティヴァル1976」のプログラムより