笙とチェロのための音楽 (1988)
作品名(英) | Music for shō and cello |
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作品名(独) | Musik für Shō und Violoncello |
作品記号 | 077 |
作品年 | 1988 |
ジャンル | 室内楽 |
演奏時間 | 14分 |
楽器 | Sho, Vc |
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曲目解説
雅楽では、楽曲全体を靄(もや)のように笙の響きが立ちこめているが、この響きの印象は、まるで高音域━天上に音塊として静止しているかのようだ。これは雅楽の鞏固(きょうこ)な様式感が醸成される一因でもあろうが、平安時代に日本化された現行の雅楽においては、笙は主に無表情な集合音塊による<伴奏> の役割を長い年月強いられてきた、ともいえよう。笙の演奏において<表情>をつけることは<下品>とみられご法度だったのである。しかし、平安朝以前の外来音楽としての雅楽合奏では、笙もなかなか<下品>であったらしい。これは、十世紀代、貞保親王の御記によるといわれる唐楽の演奏法を記した古楽書「十操記(じゅっそうき)」に、アタック音という奏法を含む十種類のさまざまな<表情>の特定があることからも推知できる。
「笙とチェロのための音楽」では、現行の<凝固する響き>から解放することで、笙の演奏に平安朝以前のイメージを求め、さらにそこに現代的演奏方法を導入しようとした。これは、そこからあたらしい<表情>を創りだそうと意図したからで、このとき、西洋音楽の雄たるチェロとの邂逅が可能になる。
笙の響きは、靄の立ちこめる天上から俗に降り立ち<表情>豊かに、チェロの<表情>と交感する。あたらしい音世界の表出を求めて、、、。
石井眞木, 1994。源:CD「石井眞木作品集Ⅲ━西の響き・東の響き━」(FONTEC/FOCD-3153)より