風姿II (1989)
作品名(英) | Fū Shi II |
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作品名(独) | Fū Shi II |
作品記号 | 087 |
作品年 | 1989 |
ジャンル | オーケストラ/協奏 |
演奏時間 | 13分 |
楽器 | nohkan, orch (small) |
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曲目解説
「風姿(Fūshi)」とは、600年前、能役者の世阿弥(Zeami/1363~1443)の芸術理論書にしばしば登場する言葉であるが、ドイツ語に訳せば "Komposition" になろうか。だが、西洋音楽の "Komposition" とは全く異なる「構成概念」を意味する言葉なので、"Gestalt" の方がより近い訳になると思う。
私の作品 "Fūshi Ⅱ (Gestalt des Windes)" は、この日本の中世の芸術思想、とりわけ、作品における構成法に大きな共感を寄せて創った作品である。
したがって、この作品には、現代的作曲技法が駆使されていると同時に、古来の日本音楽に特徴的な「間(Ma)」のリズム感覚、そして、「序破急(Zyu-Ha-Kyū)」の思考法などを構造的に細分化し、作品の内部に<網の目のように>はりめぐらせてある。
何故なら、「序破急」とは、古来の日本音楽に特徴的な形式上の<ゆっくりー中庸ー速く>という三区分と、同様のリズムを指すが、単なる「区分」、「リズム」だけでなく、本来は作品の「中枢的な構造」という考え方を表している、と考えられるからだ。
いうなれば、能楽での中心的な横笛「能管」独奏と小オーケストラが交錯しながら進行するこの曲は、古来の芸術思想から作品における「秩序」の秘密を探り、現代に応用するところから、新しい音楽の世界を表出しようとした作品なのである。
石井眞木, 1992