遥かなり、遭遇 (1993)
作品名(英) | Haruka nari, Sō-Gū |
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作品名(独) | Entflohene Zeit, Sō-Gū |
作品記号 | 099 |
作品年 | 1993 |
ジャンル | 室内楽 |
演奏時間 | 15分 |
楽器 | shaku, koto |
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曲目解説
私が初めて尺八とピアノのための作品を書いたのは一九七〇年夏のことであった。この東西の代表的な楽器のための二重奏としては、恐らく史上初の試みだったと思う。当時、あまりにも異質な音楽観をもつ楽器を前に、途方に暮れたことをいまだに鮮明に覚えている。結果的には、二つのそれぞれの独奏曲を書き、尺八には西欧的な音の跳躍などを、そしてピアノには日本の伝統音楽がもつ音要素を導入し、それぞれが様式的に接近するように、できるだ統一感を得られるようにした。それを同時空間で演奏するのである。曲のタイトルは、ずばり「遭遇I」とした。
今回、吉村七重さん、三橋貴風さんから依頼されて、再び尺八、そしてピアノにかわって二十絃箏のための二重奏を書いてみて感じたことは、あの時、二十数年前のあの時代は、すでに遙か彼方へ過ぎ去り、日本の伝統楽器に対する認識も、考え方も大きく変わった、ということだ。伝統楽器の演奏家たちの意識も、聴衆の受け取り方も、そして私自身の作曲上の姿勢も、時を経て異なってしまったようだ。誤解を恐れずに書けば、以前のような作曲上の〈東西〉という意識な希薄になり、別の地平が見えてきていると言えるかもしれない。最後に、この作品の核には、この九月に急逝された言語学者の丸山圭三郎氏との交友を追想し、追悼の念から、氏から学んだソシュールのアナグラムの応用があることを記しておきたい。
石井眞木, 1993年12月。源:吉村七重二十絃箏リサイタルのプログラムより