人間如夢(じんかん ゆめのごとし) II 」 (1998)

基本
作品名(英) Jinkan Yumenogotoshi II (Life is like a dream)
作品名(独) Jinkan Yumenogotoshi II (Life is like a dream)
作品記号 111
作品年 1998
ジャンル オーケストラ/協奏
演奏時間 30分
楽器 Vo, Orch
楽譜・譜面
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曲目解説

「三国志」にまつわる羅貫中、曹操、曹植、蘇軾の詩を題材とした作品、「人間夢の如し」が、「日中国交正常化25周年記念」の委嘱作として、「日中友好合作現代音楽祭'97in 北京」で初演されたのは、1997年10月11日の北京コンサートホール(音楽庁)でのことであった。この時は、朗誦の他、龍笛、二十絃箏、マリンバ、コントラバス、4×打楽器という編成で、アンサンブルというより<ソリストの集合>のような編成であった。

今回、最初は上記の編成を通常のオーケストラ編成に直せば<オーケストラ版>ができる、と考えたのであるが、とりかかってみて、独奏的なソリスト集団の編成の音楽をオーケストラ編成に<焼き直す>ことは全く不可能であることが判明した。したがって、この朗誦とオーケストラのための「人間夢の如し」は、羅貫中、曹操、曹植、蘇軾の詩は同じであるが、全く新しく―朗誦とオーケストラのための作品―として創造したものになった。演奏時間も、より長くなったが、作品番号も新たに作品佰拾壱番(Op. 111)とした。

しかし、<響き>あるいは<曲の長さ>が前作と異なったとしても,全体的な作品構成はほぼ同じである。前作では、朗誦の濮存日斤先生が予めこれらの詩を朗誦し、歌い、それをテ-プに収録して下さり、その素晴らしい韻と歌唱から、計り知れぬほどのインスピレーションを受けて作曲したが、今回はさらに、去年10月の北京での初演の際の、中国の詩の本質をつくような、濮存日斤先生の非常に音楽的な<朗誦表現の深さ>を念頭にしながら作曲した。

朗誦とオーケストラのための「人間夢の如し」は前作同様、プロローグ、エピローグと6つの楽章からなっているが、内容的には日本の伝統音楽のコンセプトが西欧的現代作曲技法と微妙に絡まりながら新しい<響き>をつくる。元来、日本古来の伝統音楽は、古代中国と密接な関連があるが、この観点から言えば、中国と日本は<古楽同源>である。そして、日本の伝統音楽の要素を多分に含み、中国の詩が原語で朗誦されるこの作品は、中国と深い縁のある<日中の作品>といえよう。しかし同時に、この作品を形成しているもう一つの西欧的音要素はオーケストラ表現と相俟って、これらを超えた一つの総体としての<新しい現代>を表そうとする。

初演:1998年10月30日/香港文化中心音楽廳/指揮:石井眞/朗誦:濮存日斤(Pu Cunxun)/香港管弦楽団

石井眞木