起−承−転−合 I (1998)
作品名(英) | Ki-Shō-Ten-Gō I |
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作品名(独) | Ki-Shō-Ten-Gō I |
作品記号 | 112 |
作品年 | 1998 |
ジャンル | 室内楽 |
演奏時間 | 17分 |
楽器 | shakuhachi, bas-fl + fl, bas-cl, pf, perc |
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曲目解説
「起承転合」(起承転結と同じ)とは、本来は中国の唐世になって確立した「絶句」という詩体のことを言うが、この構成法は日本に輸入され、日本人にとっては、詩の分野に止まらず、能楽における「序破急」とともに、芸術一般の構成的概念(原理)として認識されてきた。
「起承転合」の構成法を簡単に説明すれば、先ず「起」で提起し、「承」でそれを承け、「転」で「起承」を一転させる。そして最後の「合」で、「起承転」が総合される、というシンプルな構成である。一見、西洋音楽の「ソナタ形式」と類似している印象を受けるが、この「転」が、いわゆるソナタ形式にある「発展、展開」とは全く異なる概念の「転」であり、ここにソナタ形式とは似て非なる東洋的な構成法がみられよう。
今回の新作では、この構成法を強く意識しながら尺八独奏と6人の奏者のために作曲したことから「起ー承ー転ー合」というタイトルを付けたが、私はここで、尺八がある特定な<日本語のイントネーション>を模倣するという手法を使った。伝統的奏法からの大きな逸脱を図ったわけでは無いが、これまでには無かったような尺八音楽が表出することを期待して作曲した。また全体的な響きとしては、仏教的な生死観が底流するような世界を求めている。
「起ー承ー転ー合」では、丁度、僧侶が「観音経」を唱えるようなイントネーションを尺八が模倣することから始まり、全体を総合するように「喝!」と奏して終わる。
初演: 1999年2月27日/1999 Festival New York "THE WORKS OF MAKI ISHII" Music from Japan/Merkin Concert Hall/指揮:石井眞木/尺八:福田輝彦/演奏: Tera Helen O'connor, Allen Blustine, David Oel, Nachiko Maekane, William Moersch, Lynn Bernhardt.
石井眞木