サーチ・イン・グレイ I (灰色の彷徨 I) (1978)

基本
作品名(英) Search in Gray I
作品名(独) Search in Gray I
作品記号 036
作品年 1978
ジャンル オーケストラ/協奏
演奏時間 25分
楽器 Vn, Cl, Perc, Orch
楽譜・譜面

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曲目解説

石井真木の最新作、1978年の作品の世界初演である。曲名は、英文の〈Search in Gray〉のほうが主旨をよく伝えるだろう。すなわち、この作品の中で石井は、〈灰色〉の中で新しい響きのあり方を探索しているのである。若くしてベルリンに留学し、ルーファ一等にヨーロッパ的音楽理念のあり方をたたき込まれた石井は、1970-71年の〈遭遇〉シリーズ以後、プラスのエネルギー一辺倒できたヨーロッパ音楽と、負のエネルギーの存在を知るわが国の音楽とのかかわり合いを模索していたように思う。また、そうした異質の音楽文化のぶつかり合いから生まれる今日的な意味といった問題の他にも、今日まで各種の文化圏で獲得されてきたさまざまな表現方法を、今日の音楽の中でいかに用いるべきか、という問題もあったにちがいない。

1978年の作品である〈サーチ・イン・グレイ〉は、今日石井がかかえている問題を、きわめてストレートに表に出した作品のように,思われる。まだ楽譜を見ただけで響きをきいてはいないが、作曲者はいくつかのきわめて興味深いことを語ってくれた。例えば、この作品では、まずオーケストラのパートを作曲してしまい、それからソロ楽器のパートを作曲した、というのである。同じようなことを前述の〈遭遇II番〉でもやっているが(この場合は、それぞれ独立しでも演奏されるオーケストラ曲と雅楽の曲)、今度の場合のほうが、両方ともヨーロソパ楽器なのに、両者の分離とし汁意識は強かったという。この作品では、オーケストラとソロは響き自体が異るスタイルで書かれている。すなわち、オーケストラのパートはトーン・クラスターの技法を主とした従来からの不協和な響きを主体とし、ソロ・パートでは広い意味での調性感(中心音の存在)があり、3人の奏者はしばしばテンポを共有し、ポリリズム的なテクスチュアを生み出す。また、ソロ・パートでは旋律的な運動が重視されているが、その旋律運動は、ほとんどが長3度以内のせまい音程で構成されている。そのため、打楽器では始めの方ではマリンバ、終り近くからはヴィブラフォーンと、音高を持つ楽器が重要な役割をになう。だが、一つの作品を形成する以上、両者が完全に排他的であることはありえず、オーケストラから時に後期ロマン派風の甘美な響きが立ち登り、ソロもクラスター風の響きを発し、また両者は同じテンポで響きを展開させることもある。

曲はまずオーケストラで始まり、約6分ほど進んだときに、ソロが加わる。

武田明倫